橙的効果室
中国・上海市黄浦区 ( 2000年までは南市区と呼ばれていた地域 ) 河南南路から東に路地を入るとテレビ塔や上海ヒルズなどがある大きな都市の手前に、この下町が現れ、ここ一帯も開発が進んでいる。
中国のGoogleMAPは観覧規制されているので、ストリートビューができる中国版地図サイトで上海市の街を散策してスクリーンショットで写真にした。細い路地を右や左に進むと、絶対に危険な目に合わないとゆう気軽さと、顔にモザイクはかかっているけど他人の不意をついた一瞬を覗き見してしまう罪悪感、覗いてみたいとゆう良からぬ欲望、何かとんでもないものを見てしまうのではないかとゆう恐怖心と、映画のように巻き戻して再生してまた同じ場所を観ることができる疲れや神経症を引き起こしてしまう作業のすごく個人的な性格のスイッチボタンみたいなものが現れ、それでもこの道の先をぐんぐん進んで見てみたいとゆうドーパミンが出つづけている状態が、気づいたら日付けが変わった夜中から朝4時台までこの作業を行っていた。
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このストリートビュー散策をする数日前、今回の展示の置き物として家に正方形の木枠があったので、黒く藍染された反物生地を縦に三枚繋ぎ合わせ木枠に張ってみた。それがどんな風に完成するのかは決まってはなく頭の隅にずっと置いておいた。そしてこの上海市黄浦区を散策していると、それは現れた。
黒い正方形が空とも頭上とも言えないスペースに、もちろん実際に上海市のその場に有るものでなく、いわゆる"バグる ( 一時的な誤作動で )" 状態で突然出てきた。同時に人や物や建物の配置や空気感みたいなものも何だこれはとゆう絶妙なバランスで静止していて、息をできるだけ止めて急いで撮った。この誤作動が消えてしまうのを惜しく思えたし、それは頭の隅にあったあの木枠で作った黒い正方形と手を繋いだと思った。偶然が提示してくれるモノ、何の保証も姿も見えない不確かなモノにこの時ハイタッチをした。そしてそのお返しに正方形の黒い布を貼った反対側に、この写真の何処かかを拡大してモザイクにしたものを作った。これで上海市とこちら側とを、順繰りに周っている。もう自分の手に追えないところで勝手に動き続けている。他人事のようにとっくに手から離れている。" 偶然が提示してくれるもの"。それが有るものとして拾う。無いと感じれば無いし、自分にはテレパシーやそんな類いのものもたぶん10%くらいしか今のところ開花していないと思うけど、時折こうゆうことが起きて偶然や瞬間を拾ってしまう変態さが 有る とゆうことになってしまう。
これはいつも自分がしないような、避けてきた、"文章"で伝えることに挑戦している。そしておごそかな作品などではなく、いつもの置物を作ろうとしてたまたま起こった偶然を、でもその偶然に何か宿っている気がしてならないモノを、いちいち拾ってしまった記録のようなモノだから。
橙的効果室
ストリートビュー散策記録
実物 4 × 4㎝ の "手のひら雑誌"
「 CT : POS 」
           
「 橙的効果室 」
2016.1 at Essential Store